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年金分割における按分割合

婚姻後約9年間同居後、約35年間別居し離婚したケースについて、離婚時年金分割の按分割合を0.5とした事例

【裁判所】大阪高裁決定
【年月日】2019年(令和元年)8月21日決定
【出典】判例タイムズ1474号23頁
【事実の概要】
婚姻後約9年間同居後、約35年間別居し離婚したケースについて、原審は、婚姻期間に比して同居期間が短く、「年金の保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような特別の事情」があるとして、按分割合を0.35とする審判をしたのに対し、抗告人が即時抗告した。
【決定の概要】
抗告人と相手方の婚姻期間44年間中、同居期間は9年間程度にすぎないものの、夫婦は互いに扶助義務を負っているのであり(民法752条)、このことは夫婦が別居した場合においても基本的に異なるものではなく、老後のための所得保障についても夫婦の一方又は双方の収入によって、同等に形成されるべきものである。この点、抗告人と相手方が別居するに至ったことや別居期間が長期間に及んだことについて、抗告人に主たる責任があるとまでは認められないことなどを併せ考慮すれば、別居期間が長期間に及んでいることをしん酌しても、上記「特別の事情」があるということはできず、按分割合を0.5と定めることとする。

説明

■年金分割の種類

離婚時の年金分割の分割方法には、「合意分割」と「3号分割」の2種類あります。
合意分割は、平成19年4月以降の離婚について、合意・審判・判決によって報酬比例分の年金分割の割合を定める制度です。
3合分割は、平成20年4月以降の国民年金の3号被保険者(*)期間における報酬比例部分を当然に2分の1ずつ分割する制度です。
*国民年金第3号被保険者:厚生年金保険の被保険者、共済組合の組合員の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の人。

■年金分割における按分割合

年金分割における按分割合の判断については、多くの審判・決定があります。
判断枠組みの一例として、以下の決定がありますが、本件では、長期間の別居が「特別の事情」には当たらないとされました。
どのような事情があれば「特別の事情」があるといえるのか、一律の基準はなく、「特別の事情」をどのように捉えるかが判断の分かれ目になります。

【裁判所】大阪高裁決定
【年月日】2009年(平成21年)9月4日
【出典】家裁月報62巻10号54頁
【決定の概要】
年金分割は、被用者年金が夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的機能を有する制度であるから、対象期間中の保険料納付に対する寄与の程度は、特別の事情がない限り、互いに同等とみて、年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当であるところ、その趣旨は、夫婦の一方が被扶養配偶者である場合についての厚生年金保険法78条の13(いわゆる3合分割)に現れているのであって、そうでない場合であっても、基本的には変わるものではないと解すべきである。上記特別の事情については、保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合に限られる。抗告人が宗教活動に熱心であった、あるいは、長期間別居しているからといって、上記特別の事情に当たるとは認められない。

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